第6回世界家族農業会議「家族農業の生活を改善するための10年」参加レポート(1)
第6回世界家族農業会議に参加して
小規模・家族農業ネットワーク・ジャパン(SFFNJ)呼びかけ人
愛知学院大学 関根佳恵
2019年3月25~29日にスペインはバスク地方のデリオ市・ビルバオ市を会場に、第6回世界家族農業会議が開催されました。これは4年に一度開催されている国際的なイベントで、今年は「家族農業生産者の生活向上のための10年」を共通テーマとしています。今年5月27~29日にローマで開催される国連「家族農業の10年」(2019~2028年)の開幕イベント前の準備イベントに位置づけられています。各国政府、農業団体、国際機関(FAO、IFAD)、各国の家族農業全国会議、農村開発組織、NGO、協同組合、研究機関を代表して、65か国から約180名が参加しました。各国のメディアも取材に駆けつけました。日本からは小規模・家族農業ネットワーク・ジャパン(SFFNJ)が招待を受け、呼びかけ人の2名が現地に行ってきましたので、概要をご報告致します。
この会議の目的は、(1) 国連「家族農業の10年」の公式アジェンダ(行動計画)の策定に貢献すること、(2)同アジェンダ実施のために、国連「家族農業の10年」に参加する新たな主体(各国政府、農業団体、国際機関(FAO、IFAD)、各国の家族農業全国会議、農村開発組織、NGO、協同組合、研究機関、その他の市民団体)とその連携、政策対話を支援すること、(3)家族農業が人類にとって根本的に重要であるという認識を広め、SDGs実現のための重要なツールとして国連「家族農業の10年」を推進すること、(4)SDGsの枠組みにおいて国連「家族農業の10年」のアジェンダ達成に資する公共政策を策定・実施するよう働きかけること、(5)家族農業全国会議やプラットフォームというメカニズムを通じて政策対話を強化すること、(6)知識や情報、経験の共有を通じて家族農業組織を強化すること、です。
これらの目的の下で5日間、テーマごとに設置されたワーキング・グループ(女性・ジェンダー平等、若者・新規就農)、地域ごとに設置されたワーキング・グループ(アジア、アフリカ、ヨーロッパ、南北アメリカ)、言語ごとに設置されたワーキング・グループ(英語、フランス語、スペイン語)に分かれて、各テーマや国連「家族農業の10年」の行動計画について熱い議論が展開されました。参加者の皆さんは熱心に議論するあまり、ときにコーヒー・ブレイク(休憩)も忘れてしまうほどでした。特に農業団体の参加者の積極的な発言と重要な指摘には、進行役の国際機関の職員は終始圧倒されていました。これがグラスルーツ(草の根)のパワーです。私たちも、超高齢化、低自給率、都市化・過疎化等が進む日本の現状や若者の新規就農・農村回帰のハードル等をふまえつつ、これらのワーキング・グループに参加して意見表明してきました。このように、農業団体等の当事者が政策策定のプロセスに直接参加して発言することは、世界的に極めて重要視されており、世界の潮流になっていると言ってよいでしょう。日本でもぜひこの流れを作りたいと思います。
ワーキング・グループで議論された内容は本会議で報告され、国連「家族農業の10年」のアジェンダに反映されます。今年初めに世界全体で実施されたアンケートにもとづいて策定されたこのアジェンダでは、7つの柱(1.家族農業の強化を可能にする政策環境の構築、2.農村世帯・コミュニティにおける社会・経済的統合、レジリエンス(回復力)、福祉の向上、3.農林水産業の持続可能性の促進、4.家族農業の多面的機能、気候変動緩和、農的生物多様性、環境、文化を守るフードシステムを促進するための家族農業の能力強化、5.農村における家族農業組織と彼らの知の創造、包括的サービス提供の能力強化、6.若者の支援と家族農業の世代を超えた持続性の保障、7.家族農業におけるジェンダー平等と農村女性のリーダーシップを促進)が設置されています。今回の世界会議での議論を反映してアジェンダは最終決定され、それをもとに各国レベルのアジェンダが協議・策定されます。なお、このアジェンダは2年ごとに見直される予定です。
さまざまな議論が繰り広げられた会議の中で特に印象に残っているのは、アジア農民協会からのこんな発言でした。「私には夢があります。その夢とは、2028年の朝、目覚めた子どもが『私、農家になりたい』と願い、農家は『僕は農家であり続けたい』と心から思えるようになっていることです。」「農家なくして食料なし、未来なし(No Farmer, No Food, No Future)」。国連「家族農業の10年」がいよいよ始まります!
詳細情報: 世界農村フォーラム(WRF)
Twitter: https://twitter.com/worldruralforum
※記事内の写真はすべて世界農村フォーラム(World Rural Forum)より使用させていただきました。
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